ドローン鑑定とは

2017年に発表された「空の産業革命に向けたロードマップ」、そして国土交通省が推進する「i-Construction」「インフラDX」等の理念は、一部の業界に限るものではなく、これからの社会が目指すべき方向性を示すものと考えられます。
私たちの不動産鑑定業界もまた、新技術を積極的に導入することにより、品質の高い業務を追究すべき時代となっており、特にUAV(無人航空機)の活用という点に関しては、いち早くこれに取り組み、2019年に実務化を達成するとともに、2020年には有志をもってドローン鑑定会を結成し、全国的にドローン鑑定業務が行われるようになりました。
なお、私たちの取り組みは、不動産鑑定士の業務にドローンを取り込むということだけでなく、新分野であるドローン産業全般に対し不動産鑑定士が持つ専門性を活かしていこうというチャレンジでもあり、これは他業界との連携で成り立ち、世界に対し競争力のある日本のドローン産業を育てようという取り組みでもあるのです。

特許をもって新分野の業務を行うことは、同業他社を抑圧し、業界の発展を妨げるのでしょうか?
いいえ、特許によって実行者の権利利益が守られるからこそ、安心してその分野に新規参入できるのです、また、その参入者が自らの権利利益を高めようとするからこそ、更なる品質向上が達成されるのです。
新技術の浸透や品質向上には、時間が必要です。特許期間である20年という時間を費やして、ようやくその技術はジェネリックとして世に広まる準備ができる訳です。
なお、ジェネリックが出る20年後には、更なる技術やサービスが開発されているでしょう、そんなイタチゴッコを発展と言います。
不動産の鑑定評価等業務において、空撮解析というドローン活用の基礎的な所を占めるドローン鑑定は「必須特許」と位置付けれらるものであって、既に私たちは、ドローン鑑定を基礎として更なる技術サービスの開発に取り組んでいます。
ちなみに、特許というものは他業界からでも取得できるものです。仮にドローン鑑定の特許が他業界に抑えられていたとしたら、不動産鑑定士は主体的に発展への努力がしづらくなっていたでしょう。そういう意味でも特許というのは大事なものなのです。

全国にドローン活用も広まり、「協会」は立ち上げるのか?「民間資格」などにするのか?などのご助言もいただくのですが、そこはあえてNOです。
新分野であるドローン業界では、既に多様な「〇〇〇〇協会」が乱立しており、どこに信頼がおけるのか、入会することの意味や恩恵は何なのか、わかりにくい状況となっています。
私たちには、不動産鑑定士協会がありますので、改めて別組織を立ち上げる必要はないでしょう。すなわち、新分野を切り開き、それを世に認めさせる主体は協会という組織である必要は無く、個々の不動産鑑定士の活動実態で充分なのです。
特にドローンという新分野では、制度や機材等の環境変化が非常に早く、事業計画や予算を立て、委員会やワーキンググループを構成して実行に移すという体制ではとても間に合いません。
なお、ドローン鑑定会という有志の会(権利能力なき社団)は、何ら意味をなさないのではないか?と思われるかもしれませんが、実のところ、ドローン鑑定会は業務提携契約(特許使用許諾契約)を結んだ鑑定業者の総称です。
それは強制加入でもなく、不平不満をいう場でもなく、理念や利益が一致した者どおしが商取引として契約関係に立ち活動するものですので、わざわざ協会と会員、あるいは会員どおしというような関係を作るものとは異なるのです。
ドローン鑑定会は有志の会であり、契約関係です。入会審査もありますし、月一回の定例会もあります。何より、特許制度においては、特許権者がその実施者に対し義務を課すことができるのです。すなわち、業務品質を維持するためのルールを設定できるということですので、協会というルールは不要なのです。

不動産鑑定士は基本真面目です。ただ、その真面目さが仇となって、既存の風土に慣れることもできる。でも、違和感は感じているから、何かを評論してみたり、憂いてみたりする、そんな場面を多く見てきました。
しかし、ドローンという新分野に出会い、自分自身が取り組みを始めたことによって、無用な評論はやめ、憂う必要もなくなった。そんな状況を見ていると、前に進んでいるなと感じます。それが今です。
私たちドローン鑑定会は、現在29都道府県42社で取り組む体制に至りました。正直、この取り組みは、不動産鑑定士の二極化を進め、進んでいる地域と進んでいない地域が生じさせるものでしょう。それを発展の過程と信じています。
少なくとも、私たちは、自分達や社会一般と向き合い、良いと考えることを分かち合い、実践している集団です。「評価する仕事を、評価される仕事へ」というのがドローン鑑定の本質なのです。